ギター練習を終えた私は、遅めの昼ごはんをテーブルへ運んだ。
湯気の立つカレーうどんを置いた途端、部屋にいた猫たちが一斉にこちらを向く。
😑「食べたいの?」
🐱「違うニャ」
🐱「今日は見届けるニャ」
😑「何を?」
猫たちはどこから持ってきたのか、全員そろって紙エプロンを着け始めた。黒猫はゴーグル、三毛猫は鍋のふた、キジトラは小さな虫取り網まで構えている。
😑「その装備、食事に必要?」
🐱「飛来物対策ニャ」
😑「ただのカレーうどんだけど」
🐱「油断した者から染まるニャ」
私は白いTシャツを見下ろした。たしかに、嫌な予感はする。
慎重に箸を入れ、麺をほんの少しだけ持ち上げる
。
🐱「警戒ニャ!」
🐱「麺、上昇中!」
🐱「汁滴を確認ニャ!」
😑「実況しないで。緊張する」
麺を口へ運ぼうとした、その瞬間。
ぴっ。
小さなしずくが宙を舞った。
🐱「来たニャーーー!」
虫取り網を持ったキジトラが飛び込む。しかし網はしずくを華麗に通過し、カレーは私の袖へ着地した。
😑「捕れてないじゃん」
🐱「目では追えていたニャ」
😑「結果が大事なんだけど」
今度は三毛猫が鍋のふたを盾にして、私の正面へ立った。
🐱「次は守るニャ」
😑「食べにくいからどいて」
🐱「安全には多少の不便が伴うニャ」
私はふたの隙間から麺をすすった。
ずるずるっ。
今度はしずくが三毛猫のふたに命中する。
カンッ。
🐱「防いだニャ!」
猫たちから歓声が上がった。
😑「なんで私の昼ごはんが競技になってるの?」
黒猫が真剣な顔で、床に置いたノートへ記録する。
🐱「現在、一勝一敗ニャ」
😑「勝敗あるの?」
🐱「わかモンの白い服が最後まで白ければ勝利ニャ」
😑「もう袖に付いてるけど」
部屋が静まり返った。
猫たちは私の袖を見つめ、それから互いに顔を見合わせる。
🐱「……まだ薄いニャ」
🐱「遠目なら白ニャ」
🐱「光の加減ニャ」
😑「判定が甘すぎる」
結局、猫たちは麺を持ち上げるたびに騒ぎ、私は一口ごとに笑わされ、食べ終わるころには紙エプロンも床も小さな黄色い点だらけになっていた。
ただし、一番きれいだったのは、最初から最後まで少し離れた場所で見ていた黒猫だった。
😑「一匹だけ安全地帯にいたね」
🐱「指揮官は前線に出ないニャ」
😑「次は君が食べる番ね」
黒猫は無言で、ギターケースの陰へ逃げていった。

